Complete text -- "実家の猫が死にました。"

04 July

実家の猫が死にました。

7月3日夜8時過ぎ、実家の猫が息を引き取りました。
享年18歳。

19年前、おなかの大きい迷い猫が家に居着くようになり、その猫が生んだ4匹の子猫のうちの一匹でした。
生まれた4匹には妹がそれぞれに適当な仮名をつけ、貰い手が見つかるまで育てました。
クロ、カメ、トラは順々に貰われていき、「サブ」と呼ばれていた、尻尾が曲がっていて目ヤニで常に目の開かない、最後まで貰い手のいなかった子猫を、結局うちで飼うことになったのでした。
こちらも今は亡き母方の祖父が「名無しの権兵衛だから、ゴンベエだ。」とあっさり名づけ、通称ゴンちゃんという名でかわいがられました。

雄猫らしく、大きな体でしたが、生まれてから一度も親離れすることなく、母猫とずっと一緒だったせいか、おっとりした、優しい猫に育ちました。

1歳を過ぎても暇さえあれば母猫のおっぱいを吸う癖が抜けない猫でした。
自分が夏の暑い日にパンツ一丁で昼まで寝ていると、ご飯をねだりに来るついでに、乳首をかじって、両前足でぐいぐいと胸を押されたことがありました。たぶん母親のおっぱいを吸う動作なのですが、これで何度か乳首周りを傷だらけにされたこともありました。

ご飯をねだるときに、自分からひっくり返っておなかを見せるのが癖で、「ゴロンしてごらん」というとおなかを見せるという芸をマスターした時期もありました。

なぜかパンの好きな猫でした。
ビニール袋に入ったフランスパンをかじるのが好きで、でも食べるのが下手なので、結局硬い皮の一部だけ食べて満足してしまい、あとにはよだれまみれになったパンが落ちているという結果になっていたものでした。

おっとりしているので、あまりがっつくこともなく、餌もちょっと食べてはほかの猫に先に食べられてしまうタイプでしたが、結局残り物をきれいに平らげるので、どんどん大きくなりました。近所では一番大きい猫だったかもしれません。

そんなおっとりした猫でしたが、おつまみのアーモンドフィッシュだけは大好きで、いつもの態度が一変して、爪を出して人間が食べている口元の分まで狙ってくるほどでした。

もう一つ大好きだったのがなぜかカスミソウで、生けてあるカスミソウの花を、なぜかブチブチと一輪一輪食いちぎって、もしゃもしゃ食べてしまうので、うちではカスミソウを猫の届くところには置いておかないようになりました。

大きな猫なので、近所の野良ネコとよくケンカして帰ってきました。早い時期に去勢してしまったので、どちらかというと喧嘩は売られるタイプだったようです。

夜になると自分で窓を開け、どこか外へ遊びに行ってしまうので、一時期犬用の首輪をつけ、家の中の柱に紐でつないでおいたことがあります。
それでも、紐が一番伸びきった最大限の範囲で活動するものですから、ある日朝起きたら紐がトイレの窓の外にまでピンと張られた状態になっており、トイレの窓の外で首つり状態でぐったりした猫が発見されるという事件が起きたこともありました。
紐でつながれているのに窓の外へ出ようとしたのでしょう。それ以来、こちらも根負けし、紐でつなぐのはやめました。
命の危機はこれくらいで、あとは年をとって体のあちこちにガタが来るまでは元気で幸せに暮らしていたのだと思います。

乳首を噛まれるくらい自分によくなついてくれたので、実家にいる頃は、特にかわいがったものでした。
車で会社から帰ってきて、少し離れた駐車場に車を止めて家のほうに歩き始めると、曲がり角のところまで迎えに出てきていることもありました。
こちらが名前を呼ぶと返事をして、少し先まで走って行っては振り返って近づいてくるのを待ち、少し近づくとまた先まで走って行き、といういかにも猫らしいお出迎えで家まで案内してくれたものです。
ご飯が欲しかっただけなのですが。

この猫の母猫を含め、一時実家に3匹いた猫も、一匹ずつ天に召されて行き、最後に残ったこの猫も先週の半ばからついに弱ってきたため、最後のあいさつを済ませておいたところでした。

最後まで、亡骸になっても毛づやの良い、しゃっきりした猫でした。

亡骸にはカスミソウを添えました。
明日火葬です。

00:00:00 | victor | | TrackBacks
Comments

KAWAZU wrote:

彼は猫の癖に箪笥の上で寝返りをしてあたしの腹に背中から落ちてきました。その後も、隣のうちの物置の上でゴロンをし、視界から消えていきました・・・
彼は猫の癖に階段をものすごい音を立てて降りていました。
彼は猫の癖に「ごは〜ん」とないていました。
あたしの小さいときのビキニを着せて無理やり写真をとったあの日からあたしを避けるようになりました・・・
彼はあたしがしつこくすると、結構な重い引き戸を開け、去っていきました。
彼が生まれた瞬間を今でも覚えています。
07/04/08 09:05:08

どん wrote:

淡々とした書きぶりが悲しみを募らせます。
謹んでご冥福をお祈りします。
07/04/08 09:36:06

ハシモ wrote:

謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
親方の手向けたカスミソウを、今頃はもしゃもしゃと
頬張っている事でしょう。
ご家族に見守られ、本当に幸せな猫さんだと思います。
私は「あちら側に行ってしまっても、思い出せばすぐそばに居る」という言葉をなんとなく信じてはいます。
親方が思い出せば、すぐに会いに来るかも知れませんね。懐かしの乳首にも。
07/04/08 11:44:50

くけ wrote:

もう迎えに来てくれないかと思うとめちゃめちゃ寂しいですね。ぽっかり穴が開きますね・・・。
でも、そんなに長生きしてかわいがられて、ステキな猫生だったことでしょう。
ついにカスミソウももらえたし(笑)

あ、あかんなぜかあたしまで泣けてきたorz

ご冥福をお祈りします。
虹の橋にもアーモンドフィッシュがきっとあるに違いない。
07/04/08 22:33:06

victor wrote:

皆さん、お悔やみの言葉ありがとう。
今日、お骨になりました。
火葬にする前に、母が尻尾の毛だけちょっと刈っておいたようなので、少しもらっておこうと思います。
07/04/08 22:54:44

RUCA wrote:

ごんちゃんには、本当にお世話になりました。
私が今の仕事につきたいと思っていた若かれし頃、本当に貴重な経験をたくさんさせてもらいました。
正月に会いに行くたびにやはり小さくなっていく彼がいました。
18歳。大往生です。
07/05/08 07:06:56
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