11 November

「やらせ質問」報道に思う

またかとは思うがつまらないことでマスコミが盛り上がっているのが面白くない。

タウンミーティングにおける「やらせ質問」問題だ。
「政府と国民との直接対話」をうたい文句に導入したはずが、あらかじめ質問者を用意し、政府側の意に沿った質問をさせるやり方が批判を浴びている。

しかしちょっと考えればわかることだが、どんな物事でも何か発言したがるってことはだいたい反対だってことである。
主催者が何らかの説明をすることに対して意見を求められて、賛成の立場なら普通は黙っているものだ。
「その通り、賛成です」なんて立場で発言したり質問したりするのは実際のところ不自然である。
事実、国会やその他議会で行われる賛成質問なんて見ていてとっても不自然な感じがするものだ。

だから、お役所のこの手の集会に集まるのは反対派ばかりなんてことになる。
反対派市民運動団体のメンバーなんて人々が大勢陣取って、野次や怒号で集会を台無しにすることさえある。
賛成意見なんて言おうものならつるし上げ、主催者側の手先扱いされたりして、集会自体が収拾かなくなってしまう例も少なくない。

一方で賛成の立場の人と、どうでもいいと思っている人は会場に足を運ぶことさえしないのが自然である。
だから、「集会に参加した市民」の大半が反対したとしても「全市民」の大半が反対しているとはいえない。
ここがこの手の集会の最大の悩みどころなのだ。

そこで、集会成功の鍵は反対派にイニシアチブを握られないようにすることになるわけである。
自然には出にくい賛成意見もちゃんと言ってもらうように仕込んでおかないとバランスが取れなくなるから、ちょっとくらいは演出が必要だということなのだ。

そんなわけで「内閣府が活発な意見を促すきっかけをつくる目的で、参加者の発言の参考となるような資料を作成し、地元の関係者に提供した」のがいつのまにか「内閣府が市民の意見を事実上誘導した」ことになってしまった。
それを「やらせ質問」といっているわけだ。

そもそも「やらせ」という言葉自体、真実でないことを真実であるかのように報道したマスコミの過剰演出から出た言葉だ。
むしろマスコミの十八番だろう。
それを今度は政府が真似したと騒いでいるわけである。

さらにうっかり内閣府タウンミーティング担当参事官が記者団に「すべてで行われているわけではない。半分も行われていない感じだ」と発言すれば、逆手にとって「半分弱で「やらせ」があった可能性」なんて見出しで報道する。

おいおい、情報操作はどっちだ。
一番情報操作しているのはマスコミだし。
聞いているこっちが恥ずかしくなるほどである。

さらに頭が痛いのはこの後だ。

今度は安倍総理が官房長官時代に参加した「再チャレンジ」タウンミーティングでも演出が行われていたらしいことが判明する。
さぁ、マスコミは大はしゃぎだ。
安倍総理の大スキャンダルになりうる大ネタ扱いである。

しかし、よく聞くとこちらの方は発言してくれそうな人を事前に選出し、届け出ておいた程度のもの。
これははっきりいって「やらせ質問」とはまったく別の問題である。
発言の口火を切ってくれるように頼んでおくことまで「やらせ」扱いである。
だったらマスコミなんてやらせだらけじゃないか。

このところ盛り上がっているやらせ問題に人気の高い安倍総理自身とつながりが見えてきたので、だったら言いがかりでも何でも盛り上げてやろうじゃないの、といった姿勢がみえみえである。
これを「問題は拡大の様相を見せてきた」なんて報道する始末だ。

もう、どうしたらそこまで品のないくだらない報道ができるのか全く理解できないところである。

マスコミに関わる人々の中に、もしまともな神経の人が存在するなら、どうか現状打破のために是非行動していただきたい。
たぶん、できることは酒の席で理想を語る程度なんだろうとは思うが。