Complete text -- "わが子に教える作文教室"

12 December

わが子に教える作文教室

また清水義範でブックレビュー。

わが子に教える作文教室
わが子に教える作文教室
講談社現代新書
清水 義範 (著)

横浜までの出張の際、往復1時間半で読み終えた。
読みやすく、よくまとまった本。

週刊現代の連載コラムを1冊にまとめた本。
だから章立てごとにまとまりがあり、今回の自分のように一気に読まずとも区切って読むこともできる。

そもそも清水義範という人は、教育大学で国語の先生の訓練を受けた人であり、国語・日本語については一家言ある人である。
国語愛の熱い人である。

それでなのかどうなのかは知らないが、弟さんの経営する学習塾で、作文教室の先生をしていた事もある。
FAXを使っての通信添削である。
プロの作家の直接指導。なんて贅沢な。

で、その経験から、作文・文章教室モノを何作か発表している。

ちなみにこの講談社現代新書からもその作文モノが出ており、そちらは以前読んだ。
大人向け実用文書のヒントとしてはなかなか良かった。

大人のための文章教室
大人のための文章教室
講談社現代新書
清水 義範 (著)

が、この作家の良さは子供の作文指導に最大値として表れる。
どこかにやはり教育というものを考える心があるのだろう。

確かに子供のうちに学校で叩き込んでおかないと間に合わない。
昨今、幼少の国語教育を見直す活動が盛んだ。
あの子供たちが大人になったとき、今の若者はそのボキャブラリーの貧困さでやりこめられてしまうのではないだろうか。

清水義範が警鐘を鳴らすのはそんな社会の到来である。
みんな、もっと国語を大事にしましょうよと。
今の学校の国語教育はえてして作品論に多くの時間を割いているが、そんなことより読み書き、表現に力を入れるべきだ、と言っているような気がする。

ところで、いくら清水義範ががんばっても、この声が届かない大人がほとんどである。

おそらく世間の大多数の大人は自分が子供だった頃の学校教育を基準に「国語なんて勉強しても点数が上がらない」とか「国語はセンスだから勉強しても無駄」とか「国語は漢字だけしか勉強の効果がない」とか信じている。
そもそもそんな国語教育が問題なのだというところにまで行き当たることはない。

こんな地道な伝道だがどこまで世の中を変えうるのか。
そんな努力に僅かでも加担したいものである。

先の作文ひとつとっても、大人になっても勉強しようという心のある人はほっといても問題ないが、現代社会で問題なのは学ぼうという心のない人々である。

ささいな作文ひとつとっても、へたくそでも、相手に伝わらなくても気にしない人というのはいるものである。
いや、自分が作文がへたくそだと自覚しても、どう書いたらいいのか本を買って勉強するような人間ならまだいい。
世の中には「こまったなー」なんて言っているだけでおしまい、なんて人間がたくさんいる。
こういう人間は作文に限らず、万事そんな調子なのである。

で、ま、下流社会とかそういう話につながるわけだ。
困ったものである。
やれやれ。

00:00:00 | victor | | TrackBacks
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