Complete text -- "とりからあげとものもらい"

31 August

とりからあげとものもらい

続・呼び名で分かる:「人体」編 「ものもらい」、250種以上…嫌悪感・親近感も

「ものもらい」何と呼ぶ? 読者の皆さんから寄せられた「共通語だと思っていたのに、よそで使って驚かれた言葉」には、人体にまつわる言葉が多く挙がりました。そこで今回は「体のパーツ」編。「ものもらい」や「鳥肌」といった病気や状態を指す言葉にも、多くの方言があります。【銅山智子】

 ◇「ばか」と「おひめさん」

 寄せられた情報の中で、最もバリエーションが豊かだったのは「ものもらい」。

 医学的には「麦粒腫(ばくりゅうしゅ)」といい、まぶたの縁や内側に黄色ブドウ球菌などの細菌が感染して起こる目の疾患だ。

 「学生時代、目にできものができた大阪出身の友人に『ものもらいだな』と声をかけたら『ちゃう、めばちこや』と言われた。そのとき隣にいた宮崎出身の友人は『それは、めいぼ!』と譲らなかった」(埼玉・40代)。「東京で『めばちこ』と言って『湖の名前ですか』と聞かれた」(大阪・30代)−−などの体験談も多かった。

 「ばか」(宮城)のように嫌悪感が伝わる言葉もあれば、「おひめさん」(熊本)「おきゃくさん」(佐賀)「おともだち」(沖縄)のように親しみのある呼称の地域もある。両極端の印象が、呼び名として存在しているのは興味深い。

 ロート製薬(大阪)は04年、全国約1万人を対象に「ものもらい」を何と呼ぶか調べた。同社の調査データを参考に、各都道府県で最もポピュラーな「ものもらい」の呼び名をまとめたのが地図だ。「呼び名は全部で250以上もあった。世代別にみると、10〜50代は共通して1位が『ものもらい』。若い人を中心に、標準語が浸透しつつあるようだ」と、同社広報調査室は話す。

 ◇あざ、青?黒?

 打撲したときなどに内出血してできる「あざ」も、どう呼ぶかで出身地が推測できそうだ。しかも、色は青か黒かに分かれる。

 ▽あおなじみ(茨城、千葉)▽あおにえ(愛媛)▽あおたん(北海道、東京など)▽あおじみ(福岡)などは「青」派。「黒」派は▽くろにえる(愛知)▽くろにえた(岐阜)▽くろち(宮城、熊本)などだ。「くろち」は漢字で「黒血」と書くらしい。

 また、傷跡などにできる「かさぶた」を、熊本、長崎、宮崎、鹿児島などでは「つ」と一文字で表現する。「社会人になるまで『つ』が標準語で、『かさぶた』は別の皮膚病だと信じていた。東京の大学に進み、宮崎弁が出ないように話していた友人も、ある日自分の腕にできたかさぶたを『つ』と呼び、友人たちが固まったのを見て『やっちゃった〜』と気付いたそうだ」(宮崎・30代)とのエピソードも寄せられた。

 ◇「ふゆふゆ」もあるらしい

 鳥肌を「さぶいぼ」と呼ぶのは、大阪とその周辺。福岡や宮崎では「さむさむ」と言う。地域は特定できなかったが「ふゆふゆ」という呼び名もあるらしい。

 鹿児島で「頭」は「びんた」。「平手打ちの『びんた』は、逆に意味が分からなかった」(鹿児島・40代)とか。「びんちょ」は長崎で「もみあげ」のこと。「つむじ」は「ちょうまく」と言うそうだ。体の頂(頭)で巻いているから「頂巻く」なのだろうか。広島ではまゆ毛を「まひげ」、長野では舌を「へら」と呼ぶらしい。

 ひざのことを「すねぼん」と呼ぶのは岡山。かかとは「あど」(熊本)、太ももは「ももど」(佐賀)。おしりの穴を「けつめど」(茨城)「じごんす」(鹿児島)と言うなど、独特の呼び名は体の隅々にあった。(次回は「意味が違う!」編です)

つぼ八の「若どりザンギ」 ◇ザンギ載せずザンキ!?

 前回の「名詞編」掲載後、北海道の読者から「『ザンギ』が載っていない」とお便りがあった。鶏の空揚げのことで、北海道では一般的な呼び名だ。「本来のザンギは違う料理」という説もあり、生まれも育ちも北海道の私・板垣が調べた。

 名の由来は諸説ある。中国料理の炸子鳥(ジャーズージ)がなまった▽鳥を骨ごと散切りにするから−−などだ。発祥も釧路説と函館説がある。

 釧路市のザンギ専門店「鳥松」の2代目店主、高倉悟さん(60)によると、先代の故・桑原清さんが1960年に店を出した際、鶏の空揚げのことを中国語で「ザーギー」と思っていて、「ウン(運)をつけよう」と、ザンギの名前で提供したのが始まりという。

 ザンギは、しょうゆやショウガ、ニンニクなどで下味をつけて揚げるとされ、「空揚げとは別の料理」という声もある。だが、高倉さんは「ザンギも空揚げも同じだよ。作り方は店ごとに違うから」と話す。

 居酒屋チェーンのつぼ八は、全国約440のチェーン全店で若鶏の空揚げを「若どりザンギ」として提供している。「うちは北海道発祥の居酒屋。当初からザンギの名前です」と話す。

 似たような呼び方は四国の愛媛県今治市周辺にもある。鶏の空揚げを「せんざんき」と呼ぶが、由来はこちらもはっきりしない。【板垣博之】

毎日新聞 2006年11月1日 東京朝刊

09:33:00 | victor | | TrackBacks
Comments
コメントがありません
Add Comments
:

:

トラックバック